PL/SQLで繰り返し処理を行う際によく利用されるのが「カーソル」です。カーソルには大きく分けて以下の2種類があります:
- カーソルFORループ(暗黙的カーソル)
- 明示的カーソル(OPEN/FETCH/CLOSEによる制御)
本記事では、この2つのカーソルの違いと、それぞれのメリット・デメリットを整理しながら、パフォーマンスや可読性の観点からの「使い分け方」について解説します。
カーソルFORループとは
カーソルFORループは、PL/SQLにおける簡潔な構文で、以下のように記述できます。
FOR rec IN (SELECT * FROM employees) LOOP
DBMS_OUTPUT.PUT_LINE(rec.first_name || ' ' || rec.last_name);
END LOOP;
この形式では、カーソルのOPEN、FETCH、CLOSEが内部で自動的に処理されるため、コードが簡潔になります。
メリット
- 記述が短く、可読性が高い
- バグが発生しにくい(CLOSE忘れなどがない)
- 単純な繰り返し処理に向いている
デメリット
- 例外処理を細かく挿入しにくい
- パフォーマンスチューニングがしづらい
- FETCHごとのタイミング制御や条件分岐が困難
明示的カーソルとは
明示的カーソルでは、OPEN・FETCH・CLOSEを開発者自身が制御します。以下は基本的な使用例です:
DECLARE
CURSOR emp_cur IS SELECT * FROM employees;
rec employees%ROWTYPE;
BEGIN
OPEN emp_cur;
LOOP
FETCH emp_cur INTO rec;
EXIT WHEN emp_cur%NOTFOUND;
DBMS_OUTPUT.PUT_LINE(rec.first_name || ' ' || rec.last_name);
END LOOP;
CLOSE emp_cur;
END;
メリット
- ループ内での柔軟な制御が可能
- 例外処理や条件付きのFETCH処理がしやすい
- 大規模なデータ処理やエラーハンドリングに適している
デメリット
- コード量が多くなり、可読性が下がることがある
- OPEN/CLOSE忘れによるリソースリークのリスク
パフォーマンスの観点からの比較
基本的には、カーソルFORループの方が最適化されており、Oracle側で自動的に効率よく処理されます。特に小規模〜中規模データに対しては、FORループで十分です。
一方で、明示的カーソルは次のようなケースで有利です:
- FETCHごとに特定の条件で処理を中断・スキップしたい
- 複数のカーソルを並列で扱う
- メモリ使用量を制御したい(FETCH単位で処理)
可読性と保守性の観点からの選び方
コードのシンプルさやチームの保守性を重視するなら、カーソルFORループがおすすめです。バッチ処理などで例外対応やログ出力、動的SQLとの組み合わせが必要な場合は、明示的カーソルの方が柔軟に対応できます。
まとめ:どう使い分けるべきか?
PL/SQLでカーソルを使用する際は、以下のように使い分けるのが現実的です:
- 処理が単純・読みやすさ重視: カーソルFORループ
- 条件付き処理・例外制御が必要: 明示的カーソル
- 大量データの処理: パフォーマンス要件に応じて明示的カーソルを検討
どちらが「正しい」というよりは、目的に応じて選び分けることが大切です。可読性・柔軟性・処理内容を考慮して、最適なカーソルの選択を心がけましょう。