PL/SQLで大量データを処理しながら、戻り値としての結果セットを効率的に返したい場面は少なくありません。通常の関数では、処理が完了するまで結果が返らず、応答速度が遅くなることがあります。
そこで役立つのが「パイプライン関数(Pipelined Function)」です。これは、1行ずつストリームとして結果を出力できる関数で、応答性と並列処理性に優れた強力な手法です。
本記事では、パイプライン関数の基本構造から実装例、ユースケース、パフォーマンスへの影響まで詳しく解説します。
パイプライン関数とは?
パイプライン関数とは、戻り値がコレクション型のTABLE関数でありながら、行単位でデータをストリーミング返却できるPL/SQL関数です。
通常のTABLE関数との違いは、PIPE ROW文で1行ずつ出力するため、クエリ実行側がすぐに結果を受け取れる点にあります。
パイプライン関数の構文と実装例
以下は、従業員テーブルから一定の条件でフィルタリングしつつ、1行ずつ返すパイプライン関数の基本構造です。
-- 1. 戻り値として使用する行型とテーブル型を定義
CREATE OR REPLACE TYPE emp_row_type AS OBJECT (
emp_id NUMBER,
emp_name VARCHAR2(100)
);
CREATE OR REPLACE TYPE emp_table_type AS TABLE OF emp_row_type;
-- 2. パイプライン関数本体の作成
CREATE OR REPLACE FUNCTION get_active_employees
RETURN emp_table_type PIPELINED
IS
BEGIN
FOR rec IN (
SELECT employee_id, first_name || ' ' || last_name AS full_name
FROM employees
WHERE status = 'ACTIVE'
) LOOP
PIPE ROW(emp_row_type(rec.employee_id, rec.full_name));
END LOOP;
RETURN;
END;
-- 3. 通常のテーブルとしてSELECT可能
SELECT * FROM TABLE(get_active_employees);
パイプライン関数のメリット
- 応答速度の向上:1行ずつ即座に返すことで待機時間を短縮
- メモリ効率の改善:全結果を一度に保持しないため、メモリ使用量を抑制
- 大規模データに適した設計:バッチ処理やETL処理などで活用される
- ビューやストアドSQLで利用可能:テーブル関数として柔軟に呼び出せる
パイプライン関数のユースケース
実務での代表的な使用例として、以下が挙げられます。
- データウェアハウス向けのETL処理(大量データの整形・抽出)
- 複雑なロジックを持つビューの高速化
- 動的なフィルタを含む処理のカスタム関数化
- ロギングや監視用のストリーム出力
パイプライン関数使用時の注意点
非常に便利なパイプライン関数ですが、以下のような注意点も存在します。
- SQL以外のPL/SQLコンテキストでは利用できない(RETURN句を待つ)
- 複雑なカーソルやネスト処理ではパフォーマンスが低下する可能性
- パイプライン化しても、SQLチューニングを怠ると効果が出ない
まとめ:大量データ処理における強力な武器
PL/SQLで大量データを処理し、即座にレスポンスを返したいなら、パイプライン関数は非常に有効な手段です。
特に、処理中に次の行を待たずにクエリ側がデータ取得を始められるという特性は、大規模システムや並列性が重視される現場で威力を発揮します。
一方で、乱用すればパフォーマンスが悪化したり、保守性が下がる危険性もあるため、ユースケースを明確にして適切に設計・導入することが重要です。
業務でのデータストリーミング処理をより効率的にしたいとき、パイプライン関数の導入をぜひ検討してみてください。